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取引記録の監査手続
現金預金に関する記帳については、現金預金の収支を示す証拠資料を調査して、正当な記帳が行われているかどうかを確かめます。
財務諸表項目の監査手続
- 会社が現に保有する現金については、実査又は立会を行い、関係帳簿残高と照合します。
- 預金については、預金先からの残高証明書を求め、かつ、証書若しくは通牒を閲覧し、又は預金先に対して確認を行い、関係帳簿残高と照合します。
- 現金及び預金の残高を照合する手続は、原則として、会社が現に保有する手形及び有価証券の実査、立会又は確認と同時に実施します。
- 現金及び預金については、勘定分析等により残高の妥当性を確かめます。
現金の実査
現金の実査とは、公認会計士自ら、会社にある現金を数えるという監査の手法です。金庫にある札束、レジにある釣銭やコインロールはもちろん、その他の現金同等物(郵便切手・収入印紙・ビール券・旅行券・プリペイドカード・タクシーチケット・新幹線チケット・図書券・商品券・優待券など)まで、全てを公認会計士が実際に確認していきます。
実際にカウントした金額と、会計帳簿があっているかという視点だけではなく、現金同等物をどう取り扱っているかといった視点でもチェックします。これらの現金同等物は、会社の判断によって、現金と同様の扱いができるため、この扱いも重要になってくるのです。
現金の管理
複数の支店や店舗等にちらばって現金が保管されている場合、公認会計士が全ての支店や店舗に出向いて現金を数えて回ることはできません。
このような時は、現金の金額の大きい支店や店舗だけ、公認会計士自らが現金実査を行い、その他の支店や店舗においては、会社が行った現金実査の結果を利用させてもらうことになります。
そこで重要になってくるのが、内部統制の視点です。わかりやすく言うと、「きちんと現金の管理をしているか」ということです。例えば、現金の実際の出金業務を行う人と会計帳簿に記録する業務を行う人が同一人物でないかという職務分掌や、現金実査の実施頻度が、毎日なのか? 週1なのか? それとも月1なのか?や、すぐに上席者の承認がなされているか?という承認の適時適切性がポイントになってきます。
また、現金は、私的流用や盗難などのリスクが高いものである上に、銀行振込の様に取引の記録が残らないため、不正に利用される可能性が大きい資産です。そこで、現金はもちろん現金同等物も、毎日金庫に入れて保管しているか?という保管の適切性、そして、その金庫の鍵は適切な職階の人間が管理しているか?という管理の適切性もポイントとなってきます。
公認会計士としては、これらが全てきちんとしていれば、その会社の内部統制が整っているとみなし、会社が行った現金実査の結果を安心して利用できるのです。
小切手の管理
小切手については、不正に使用される恐れがあり、その振り出しや受け取りが、タイムリーに帳簿に反映されていない可能性があります。
そこで、公認会計士は、会社が振り出した自社の小切手については小切手のミミの情報(小切手ナンバー・振出日付・金額・振出先等)を元にして、当該小切手が決済された日に、きちんと預金の帳簿金額が減額されているかをチェックします。小切手の管理表を作成し、引き落とされていく都度チェックしていくなど、日頃から小切手の決済状況を適切に管理する事が望ましいでしょう。
通帳の確認
通帳名義の正当性
もし、会社の通帳の名義が経理担当者の個人名義となっている通帳だったらどうでしょう?「いや、これは会社のものです」と言われても信用出来ません。やはり、会社の通帳は「会社の名称+代表者役職名+代表者氏名」という形式となっている事が望ましいです。仮に代表者が交代した場合には、きちんと名義変更も行っておきましょう。
通帳記録の連続性
期の途中で通帳が繰越になった場合、通帳の表紙の番号が通し番号となっているか?また、古い通帳の最終行と新しい通帳の最初の行が同一金額であるか?を確認することで、入出金が網羅的に記録されていることをチェックします。従って、古い通帳も破棄せず大切に保管しておいて下さい。
通帳と帳簿残高の一致のチェック
これらがピッタリ一致することを日々きちんと確認しておいて下さい。そのためには、出来る限りタイムリーに、通帳記入を済ましておく必要がありますね。もし、銀行の営業時間外の取引などの理由により、通帳と帳簿残高が一致しない場合には、銀行勘定調整表を作成して一致しない理由を記載されていると良いでしょう。
まとめ
以上、現金について、公認会計士の視点を述べましたが、そもそも理由もなく多額の現金を社内に保有している会社はとてもリスクが高いと言えます。実際、会社も現金はリスクが高いということを重々承知しているため、通常現金を社内に保有しておくことは必要最低限にとどめ、残りは銀行口座に入れておくことが一般的です。