企業買収の上手な進め方

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磯村 崇


大学卒業後、会計事務所・M&A専門会社(現在、東証1部上場)を経て、平成20年株式会社コスモスコンサルティングに入社。

「答えは、社長の心の中にある」がモットーで、社長の話に真摯に耳を傾け、企業の発展と存続のため、社長と後継者の真の気持ちに重きを置いた事業承継対策・勇退のサポートに取り組んでいる。

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自社の経営資源によって事業の強化、新規事業の立ち上げをするには、必要な設備を購入するだけでなく、従業員の雇用・育成、技術・ノウハウの蓄積、仕入先・販路の開拓、パートナーの協力などが必要になります。

新規事業の立ち上げと比べると、既にその事業分野でビジネスモデルができあがっている企業を買収することは、時間・コスト・手間の削減になり、大きなメリットがあります。一方で、企業買収に失敗したという話は後を絶ちません。

さて今回は、失敗を防ぐ企業買収の進め方をご紹介いたします。( ̄^ ̄ゞビシッ!

この記事は、こんな人におすすめです!
  • 企業買収を考えているが失敗したくない人
  • 得意先に事業を引き継いで欲しいと言われている人
  • 明確な経営ビジョンがある人

こんな企業買収は失敗する

非常に残念なことですが、全ての企業買収が成功するわけではありません。中には、互いの良さを潰し合い、結果として失敗に終わってしまうことだってあります。場合によっては、買収資金の返済や償却負担が重くなり、最悪の事態に陥ってしまいます。

企業買収が失敗に陥る原因は、主に3つです。

❶ 企業買収の目的が不明瞭

M&Aの失敗の原因として一番に挙げられるのが、企業買収の目的が明確でないことです。買収を行うことに価値があるかどうか、投資の採算性を説明できるかどうかがポイントとなります。

企業買収は、不動産の購入と一緒で、全く同じ会社は存在しません。そのため、時として買収価額が跳ね上がることがあります。その際注意すべきことは、買収プレミアム(株価を市場価格にプレミアムを上乗せして獲得すること)です。買収目的が明確ではない場合、雰囲気に流されて高値づかみをしてしまうことがあります。

★ 企業買収の成功へポイント
  • 買収価格の決定は慎重にかつ、評価の前提をよく検討すること
  • どうにかなるという過剰な成功シナリオは失敗のもと
  • 過大なのれんの計上が必要な買収は慎重に行うこと

❷ 企業買収時の調査が不十分

会社を買収する際に、弁護士、会計士、税理士といった専門家によるいわゆるデューデリジェンス(DD)を行うのが一般的です。DDを怠たったり調査の範囲を絞りすぎたために、後で苦労をしょい込むことがあります。部分的には専門家を起用したとしても、不足する部分は独自で調査するようにしましょう。

★ 企業買収の成功へポイント
  • 買収コストがかかるといって買収先の調査を惜しまないこと
  • 買収時の調査は、できる限り時間をかけて行うこと
  • 調査に時間をかけられないときは売買契約等で損失補填が可能な状況にしておくこと

❸ 企業文化の不一致

会社を買う際、資産や負債の査定はできても、人材の査定はなかなか難しいものです。だから、せっかく買収できても、買収した会社のキーマンが辞めたり、企業文化が合わず、従業員同士が反発しあったりすることがあります。

苦労した交渉が実り企業買収が成立すると、対外発表もされ、社内では安堵感も漂っているかもしれません。しかし、ここからが本番です。できるだけ早急に、新体制を構築する必要があります。

★ 企業買収の成功へポイント
  • 会社の買収は、買うだけではなくその後の統合のことまでしっかりと準備する
  • 買収した会社が強いのではなく適切な権限委譲も必要
  • 統合は時間をかけるのではなく、スピードを重視すること

本来、経営戦略の手段として企業買収を行うべきですが、手段と目的が混同してしまう会社も少なくありません。「買収ありき」で検討を始めると、ろくなことにならないので、よくよく考えて進めていきましょう。

まずは、そもそも企業買収とはどのようなことなのか、見ていきたいと思います。

企業買収とは

M&Aにおける買収とは、ある企業が他の企業を支配する目的で、発行済株式を過半数買い取る意味で使われます。一般的に、過半数の株式を獲得することを、子会社化とも言います。

通常、議決権を有する株式の過半数で、普通決議による決定事項(役員の選任など)を自由に決めることができるようになります。さらに、3分の2以上を獲得すれば、特別決議による決定事項(定款変更や組織再編など)も含めた、ほとんどの経営権を支配することが可能です。これにより、少数の株主を強制的に排除することができるスクイーズ・アウト(少数株主排除)を検討できるようになります。

議決権の保有割合における株主の権利は、こちらの表をご覧ください。

議決権保有割合と決議・権利の内容

議決権保有割合 株主の権利
75%以上 株主総会の特殊決議を単独で成立可能
・全部の株式についての譲渡制限を定款に記載
66%以上 株主総会の特別決議を単独で成立可能
・事業の全部譲渡、定款変更など
50%超 株主総会の普通決議を単独で成立可能
・取締役の解任、剰余金の配当など
50%以上 ・株主総会の普通決議を単独で阻止可能
25%以上 ・相互保有株式の議決権停止
10%以上 ・解散請求権
3%以上 ・総会招集請求権
・役員の解任請求権
・業務財産検査役選任請求権
・会計帳簿閲覧請求権
1%以上 ・会計検査役選任請求権
・株主提案権

主なものは、こんなかんじです。

また、株式の取得以外にも、特定の事業や部門の重要な資産(不動産やライセンスなど)を取得することも、買収と呼ぶことがあります。

友好的買収と敵対的買収

株式を公開していない中小企業の場合、オーナーの意向を無視した買収はありえません。法律的に、株主の同意なく株式を取得する術がないからです。また、従業員がモチベーションを持って働いてもらうためにも、友好的買収でなければいけません。

一方、上場企業では敵対的買収がごく稀にありますが、多くの場合、買収防衛策を発動させることで買収を逃れています。代表的な買収防衛策は、以下のとおりです。

敵対的買収の防衛策

類型 買収防衛策 内容
企業価値を
引き下げる
焦土作戦
(Crown Jewel)
重要な資産を売却することにより、会社の価値を減少させ、買収の意義を奪う。
ゴールデンパラシュート
(Golden parachute)
敵対的買収によって経営陣が解雇された場合、巨額の退職金を支払う契約を結ぶことで、 買収が成立した後の会社の価値を引き下げる。
取締役会を
守る
スーパーマジョリティ
(Super Majority)
定款によって特定の議案について株主総会における決議要件を通常よりも加重することで、 敵対的な買収者による支配を困難にさせる。
スタッガードボード
(Staggered Board)
取締役の任期をずらすことで、1回の総会における改選で全ての取締役を変更できないよう にすること。
株主総会を
守る
黄金株
(拒否権付種類株式)
会社の重要事項について拒否権を持つ株式を黄金株という。 会社に友好的な株主に黄金株を与えておけば、敵対的な買収者の議案を否決することが できる。
ポイズンピル
(Poison pill)
有利な価額で新株を取得できる新株予約権を既存の株主に割り当てておくこと。 敵対的買収者が現れたとき、この権利を行使すると既存の株主が持つ株式数だけが増加することで、買収が困難になる。
ホワイトナイト
(White Knight)
友好的な買収者に自社を買収してもらう方法。 第三者割当増資や新株予約権を付与する形で行われることが多い。
買収者を攻める パックマンディフェンス
(Packman Defense)
敵対的な買収者に対して、逆に買収を仕掛けることで対抗する方法。

敵対的買収は、買収者が入手できる情報の質や量に限界がある中で実行されるため、友好的買収に比較すると取引コストが高くつく傾向があります。日本においては、風評被害や、買収防衛策の発動などを恐れ、積極的に敵対的買収を選択する企業はほとんどないのが現状です。

好きなあの娘を口説くとき、しつこく強引に迫っても上手くいくことはまずありません。企業買収もまったくおんなじです。

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