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「エネルギーとエレクトロニクスの東芝がお送りいたします」というナレーション。誰もが一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。毎週日曜日、夕方6時30分から放送されている「サザエさん」のスポンサー東芝が今、揺れに揺れています。
巨額な損失による債務超過、深刻な経営不振、そして粉飾決算・・・。40年以上にわたってCMを提供してきた東芝が、サザエさんのスポンサーから降板するという噂さえあります。
さて今回は、 日本を代表する大企業 東芝のウエスチングハウス買収について探っていきたいと思います。
国民的人気アニメ「サザエさん」は、今年で48年目を迎えますが、その背景にはスポンサーを担っている東芝の存在があります。逆に、東芝は、サザエさんを通して広く社会に浸透したと言っても過言ではありません。サザエさんのスポンサー料は、月間7,000万円、年間で8億円超の支出と言われるだけに、株主から「無駄遣い」とやり玉に挙げられる可能性があります。
ネット上では、東芝から別の大型スポンサーに変更した場合、サザエさんの家庭にどのような変化が起こるか、議論になっています。
これはこれで、なかなか面白い考察です。M&Aアドバイザーは、基本的に”タラレバ”考えるのが大好きで、筆者も例外ではありません。スポンサーに振り回される磯野家も、たまったものではないですね。
ちなみに、3月8日の共同通信によると、東芝は少なくとも半年間はスポンサーを継続すると発表しています。どうやら、スポンサーを降りることによる企業イメージの悪化だけは、避けたいようです。
それにしても、東芝はなぜ、このような事態に陥ってしまったのでしょうか。
東芝の凋落は、日本だけでなく世界にも大きな衝撃を与えています。日本を代表する超優良企業が、たった一度の判断ミスで転落してしまうという、経営の恐ろしさをまざまざと見せつけられたからです。
東芝といえば、テレビや半導体、重電機、軍事・防衛関連、鉄道車両など、家電から重電に至る総合電機メーカーです。冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、炊飯器などの白物家電を次々と製品化し、日本人のライフスタイルを変革した、日本の生活文化をリードする企業の一つでした。
東芝のシナリオが大きく狂い始めたのは、2011年、東日本大震災後です。福島第一原発事故により、原子力発電所の建設が世界各地で凍結されたことに端を発します。社内で「チャレンジ」と称して、経営陣が発破をかけるようになったのはこの頃からです。
2015年に明らかになった粉飾決算をきっかけに、東芝は一気に転落。直近の3人の社長と経営陣9人が引責辞任し、東芝株は特設注意市場銘柄に指定されます。2016年になると、白物家電、医薬品事業、映像事業などを次々と売却。従業員約1万人をリストラし、あれよあれよと、凋落してしまいました。
深刻な事態は、これだけではありません。2006年、約6,600億円で買収したアメリカの原子力メーカー・ウエスチングハウスが、巨額の赤字を抱えていることが明らかになったのです。
その結果、債務超過を防ぐために、将来の成長分野である原子力部門と半導体部門を放出せざるを得なくなったのです。資金繰りを確保するには、やむを得ない選択でした。特に、世界で2位のシェアを誇り、年間1,100億円の利益を稼ぎ出す半導体部門の分社化、株式売却は苦渋の決断だったと思います。
主力部門の売却は、資金繰りを確保できたとしても、成長の柱を失うことになります。今後の再生・再建の足がかりは、かなり厳しいものになると予想されます。また、売却できないと上場廃止に陥る可能性があります。いずれにしても、茨(いばら)の道が待ち受けていることは、間違いありません。
東芝が陥った状況は、決して人ごとではありません。どの会社でも起こり得る問題です。考えられる失敗の原因は、主に三つあります。
ウエスチングハウスの買収をめぐっては、三菱重工が買収先として有力視されていました。そこに割って入ったのが、東芝です。当初、不利だと思われていた東芝の買収ですが、土壇場で逆転に成功します。決め手になったのは、買収金額です。東芝は、相場の三倍近い金額を提示し、一気に競り落としたのです。ライバルだった三菱重工は、投資対効果に首をひねったそうです。東芝社内でも、高値づかみを心配する声があがりましたが、”将来の飯のタネ”ということで、黙殺されてしまいました。
M&Aは、クロージングされなければ、細かいところまでは決められないものです。また、実際に統合をしていくと、事前に決めた内容に不都合が生じてくるものです。買収後に、軌道修正しなければならない部分が山ほど出てくるものと言っていいでしょう。さらに、原子力発電は高度かつ複雑なシステムで、部外者には理解しがたい側面があります。調整すべき部分がたくさんあるにも関わらず、社内でアンタッチャブル扱いでした。現地に任せっきりというよりは、買いっ放しの状態だったのです。
海外企業では、意思疎通のズレや、誤解の発生は避けられません。国籍、民族、宗教、文化などが違うため、情報の共有も簡単ではありません。ましてや原発ビジネスでは、安全規制や契約、作業規準など、国によって違っています。多くの日本の本社が簡単に口出しできず、現地の経営陣に丸投げせざるをえないのが実情です。東芝は、海外ビジネスの経験がありませんでした。ズサンな危機管理、脆弱なガバナンスなどは、海外でのマネジメント経験の不足が影響していました。
この結果、東芝はリスクを把握することすら困難な状況に陥っていたのです。ウエスチングハウスの買収は、この典型例と言えるでしょう。
現在、どの業界を見てもM&Aブームが巻き起こっています。M&Aは手っ取り早い手段ですが、大小限らず失敗している会社も多くあります。新たな能力を獲得すると同時に、リスクを抱え込むことがあるので注意が必要です。2006年当時、原発事故を予測することは難しかったと思いますが、買収後のリスクマネジメントを怠っていたのは、杜撰としか言いようがありません。
買収は難しい判断を要します。だから、個人的には、買収を決断した責任者自らが経営の舵取りをすべきだと思います。原発事業については、特殊な技術、しかも応用範囲が極めて狭いので、特にそうです。今ここで、東芝の失敗から学び、自社の糧にするために、企業成長のあり方をじっくりと考えてみる価値があるのではないでしょうか。
3月下旬、経営危機に瀕する東芝株に異変が起きました。“旧村上ファンド”の出身者が設立したエフィッシモ・キャピタル・マネージメント(本社シンガポール)が、突如、東芝の筆頭株主(8.14%保有)に躍り出たのです。「高値で早々に売り抜け、ひと儲けする作戦」というのが大方の見方ですが、不気味ですよね。
ちなみに、10%以上の株主になると、会社の解散を裁判所に請求できる「解散請求権」が発生します。さらに、33%を超えると、株主総会における特別決議(合併・会社分割、定款変更など)を単独で阻止できます。いち投資家としては、“旧村上ファンド”エフィッシモの動きにも注意が必要ですね。
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