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先日、サンフランシスコに行ってきました。結論から言うと、すごく良かったです。と同時に、ハンマーで頭をぶん殴られたような大きな衝撃を喰らいました。ものすごい危機感です。やれIT企業だ、やれシリコンバレーだ言って、浮かれていた自分がとっても恥ずかしくなっちゃいました。
さて今回は、筆者が肌で感じたシリコンバレーについて、お伝えしたいと思います。
この孫悟空のキャラクター。当ブログの読者であれば、どこかでお目にしたことがあるかもしれません。このキャラは、筆者がIT好きということで、「クラウド(雲)に乗っかる」という意味を込めて、知り合いが描いてくれた似顔絵です。(この雲には「筋斗雲(金と運)に乗っかる」という裏の意味もあります。)手にしているのは、かじられたリンゴ、そうアップルのロゴマークです。似顔絵にITをイメージするモノを散りばめるほど、IT大好きな筆者なのであります。
ホントITが好きすぎて、当ブログ「ロマンとソロバン」でも、何度かシリコンバレーの経営者を取り上げています。
シリコンバレーで活躍する経営者のスケール感は半端ありません。最新ガジェットやアプリはもちろんですが、これらの製品やサービスを生み出した経営者のマインドや、時には無謀とも思えるチャレンジングな人生に、どうしようもなく惹かれてしまうのです。そんなシリコンバレーのぶっ飛んだ経営者が大好きな筆者が、シリコンバレーで感じたことを、熱が冷めないうちに書き留めてみました。ご覧いただけるとうれしいです。
グーグルやアップル、フェイスブックなど、名だたるIT企業が集まっているのが、シリコンバレーです。下の地図を見てもらうと、よくおわかりになると思います。カリフォルニア州のサンフランシスコからサウスベイと呼ばれるエリアに、IT企業が集中しています。だいたい車で1時間ほどのところに、大企業が並んでいる様は、まさに圧巻。多くが自社ビルを所有しており、その大きさには驚かされました。(アップルやセールスフォースは、人が入りきらず新社屋を建設中でした。)
驚いたのが不動産バブルとも言えるほどに、不動産価格が高騰していたことです。IT企業が世界中からエンジニアをかき集めたためです。限られた土地に富裕層が集中しているので、通常では考えられない金額で取引されています。バスガイドさんの話によると、サンフランシスコ市内のワンルームを借りようとすると、一か月の家賃が30万円。ワンルームですよ。そして、どんなぼろっちいうちを購入にするにも1億円は下らないとのこと。ビックリですよね。
ちなみに、アップルやグーグルのエンジニアの初任給は、年収で約2,000万円。これくらいないと、サンフランシスコで住むことはできません。(バスガイドさんが20年前に約3,000万円で買ったうちは、5倍以上に膨らんでいるそうです。)
一方で、住むところのない人が路上で生活していたり、人口が増えすぎて渋滞が日常茶飯事になっていたり、貧富の差も拡大しています。さすがに、良いところばかりではありません。ただ、このような問題を積極的に解決していこうとするのが、シリコンバレーのエンジニアの素晴らしいところです。
例えば、住むところがないのであれば、部屋を持て余している人に借りてしまえば良いという発想で生まれたのが、Airbnb(エアビーアンドビー)であり、渋滞がひどいなら、車をシェアすれば良いという発想で生まれたのが、UBER(ウーバー)です。いずれも、法的な問題をクリアする前に、リリースすることを重要視しています。
シリコンバレーのエンジニアは、検索時間を0.1秒短縮するのに日々悪戦苦闘しています。なのに、通勤時間や渋滞に大切な時間を奪われることは、我慢ならない切実な問題です。地下鉄など公共交通網が整っていれば良いのですが、解決には時間がかかる問題です。(過去に鉄道網を増設する話はあったが、予算の関係で立ち消えたそうです。)「国がやらないのなら、俺がやってやる!」という使命感が、彼らの原動力の源であり、アイデア重視のスタートアップにおいては、問題解決が先で法的な面は後回し。民泊だろうが、白タクだろうが、免許のことはお構いなし。何はともあれ、スピードが命なのです。
スピード重視の姿勢は、プレゼンにも見られます。シリコンバレーでは、ほぼ毎日街のどこかでプレゼンが開かれています。プレゼンと言っても、喫茶店で行われる小さなものから、コンベンション形式で行われる大きなものまで様々です。一昔前に流行ったマネーの虎という番組を思い描いて頂くと、理解が早いかもしれません。
事業家は自分のアイデアを実現するために、投資家に対してプレゼンを行います。マネーの虎と大きく違うのは、虎(エンジェル投資家)の態度です。投資家は決して高圧的な態度を表にしません。対等な立場で事業家のアイデアや技術に真剣に耳を傾けます。良いアイデアを育てていこうという風土が、シリコンバレーにはあるのです。とは言え、投資にはリスクはつきもの。プレゼンを行うにあたって、いくつかのルールが存在するのです。
人は苦痛を取り除くためには、お金を支払うものです。だから、ビジネスモデルをプレゼンする時も、課題をペイン(苦痛)、解決方法をペインキラー(処方箋)という順番で説明します。いたって、シンプルですよね。これは、セコイア・キャピタルの「事業計画の書きかた」をモデルとしており、シリコンバレーでは一般化しているそうです。シリコンバレーの投資家にとって、①誰の役に立ち ②どのようにビジネスが発展するか、が重要なことであり、初期段階のプレゼンにおいては、これで十分なのです。
エンジェル投資家も長い時間プレゼンを聞くほど、暇ではありません。なので、プレゼン時間はビジネスモデルが2分、質疑応答が3分の、合計5分ほど。資料を使うことは、ほとんどないそうです。『「どんなペイン(苦痛)があって、どんなペインキラー(処方箋)があるのか」を説明するのに、2分もあれば十分でしょ』ってのが、シリコンバレー流です。言われてみれば、そのとおりかもしれません。準備に時間がかかるパワポでの説明なんて、もってのほかです。
大企業に対する反逆意識が強いシリコンバレーでは、スーツ姿の人間は信用されません。現地のコーディネーターに、「スーツだけは着てこないでくださいね」と注意されるほどです。日本とは真逆ですよね。スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグのラフなスタイルは決して特別ではなく、シリコンバレーのスタンダードなのです。
<スーツを着ている人に対するシリコンバレーのイメージ>
・権力を誇示したがるが、他の従業員とのコミニュケーション量が少ない
・物事の詳細よりも概念的な考え方をしがち
・具体的なデータや事実ではなく主観に頼った決断をしがち
シリコンバレーの何がスゴイか改めて考えてみると、次から次へと新しいビジネスが生まれ、新陳代謝がうまく機能しているところではないかと思います。それを可能とするのが、起業家を取り巻く環境やコミュニティです。シリコンバレーでは、起業家を支えるプレイヤーがわんさと溢れています。
<シリコンバレーの起業家を取り巻くコミュニティ>
・アドバイザーやメンター: 起業経験があり、アドバイスできる人
・インキュベーターとアクセラレータ: 設立間もないスタートアップをサポートする企業
・エンジェル投資家とベンチャーキャピタル: 企業に対して投資を行う人や企業
・アイデアに投資する大企業: IPOだけではなくM&AによるEXITの機会を作れる企業
さらに、コミュニティ全体で情報を共有することにより、全体の成長スピードを下支えしています。しかも、取り巻く人の多くがエンジニアというのも、シリコンバレーの大きな特徴です。プログラミングをマスターしたエンジニアは、すべてロジックで考えます。彼らは、課題解決に向けた最短の方法を探し出す天才です。技術的な問題をクリアする方法、人材がどこにいるか、ビジネスモデル、マーケティング、資金調達、世界展開、会社の売却、IPOにいたるまで、人的ネットワークをフルに活用するのです。その最たるものが、ペイパル・マフィアです。
このように、シリコンバレーでは世界でも極めて特異なカタチで、発展しつづけているのです。この好循環を支えているのが、ペイ・フォワードという考え方です。
シリコンバレーでは、上の世代から受けた恩は、下の世代に返すことが美徳であり、習慣になっています。これをペイ・フォワード(次へ渡す)と言います。吉本芸人が先輩におごってもらった時に、「お前も後輩におごってやれよ」ってのが、ペイ・フォワードです。反対に、人から受けた厚意を、その相手に返すことをペイ・バックと言います。「鶴の恩返し」はその典型です。
日本では、昔話の影響もあり、恩返しが美徳と考えられています。国土が狭いうえに単一民族なので、恩返しをすることはそれほど難しいことではありません。しかし、アメリカは、フロンティアスピリッツにあふれる国民性なので、すぐに引っ越してしまいます。恩返しをしようと思っても、できないことがほとんです。そんな風土で生まれた文化が、ペイ・フォワードです。特に移民が多いシリコンバレーでは、この考え方が浸透しているそうです。
クレイジーなアイデアを思いつく ⇒ 大金を手にしたエンジニアが、次のスタートアップを支える ⇒ サービスとサービスを組み合わせて、大きな課題を解決する ⇒ 世界的な企業に発展する。
これらのことを可能にするのは、根本にペイ・フォワードという考え方があり、新たなことにチャレンジすることを応援する文化が影響しているように思います。
先ほど例に出したUBER(ウーバー)も、そうです。CEOのトラビス・カラニックは、ハッキリ言って狂っています。白タクをビジネスにしちゃうくらいですからね。でも実際にUBER(ウーバー)のアプリを使ってみると、とても便利なことがわかります。アプリ内でクレジット払いなのでボラれる心配はないし、運賃はタクシーの半分くらいなので経済的です。ボランティア・ドライバー(一般人)とルートをアプリで共有するため、英語が話せなくても問題ないし、ドライバーが道を間違えることもありません。
UBER(ウーバー)の場合、アイデアを面白がる人がおり、ボランティア・ドライバーが自家用車で向かうというペインキラー(処方箋)もはっきりしています。しかも、世界に目を向けてみると、同じようなペイン(痛み)で頭を抱えている人が大勢います。また、配車システムや使いやすいインターフェイスを有しているということで、アイデアや投資家が続々と集まってきます。さらに、自動運転が一般化すると、世界を席巻する可能性すら見えてきます。ドライバーを確保する必要がないですからね。そうなったら、勝手に車が小遣いを稼ぐ時代の幕開けとなり、タクシー業界は壊滅的なダメージを喰らうことでしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=-Ds_4oTOwfU
自動車業界で経済を支えている日本にとって恐ろしいのは、電気自動車と自動運転がセットでやってくることです。それをやろうとしているのが、テスラです。上の動画を見ると、それがよくわかります。AI(人工知能)やセンサー類の発展により、世界は予想よりも早く動いています。自動運転の技術は、すぐそこまで来ています。ちなみに、テスラ車は、プログラム(オート・パイロット・システム)をインストールさえすれば、自動運転が可能なスペックを既に積んでいます。いつか法改正で自動運転が可能となったとき、まるでオセロのように自動車業界のシェアが一気にひっくり返ることさえありえます。このような動向の中、日本の自動車会社がどのような対抗策を講じているのか、非常に興味深いところです。
日本では新しいことをしようとすれば、笑われたり、リスクばかり考えて前に進めなかったり、出る杭は打たれてしまう文化があるような気がします。シリコンバレーを見ていると、そんなことがとてもバカらしく思えてきます。彼らは、そんなことは気にしません。狂っているほどクール(カッコいい)のです。「権威なんてクソくらえっ」なんです。この考えが、一部の超優秀な経営者だけではなく、シリコンバレー全体に深く浸透しているのです。ホント、凄い街ですよ。
インターネットの普及により、私たちが信じてきたルールは破壊されつつあります。だから、私たち日本人も上司の顔や会社の評価、友人からの嘲笑なんか気にせず、好きなことをドンドンやるべきだと思います。その結果として、世界が変わっていくのです。
今回、シリコンバレーの人たちと直に接したことで、日本も、夢や自分の好きなことを自由に語れる、そんな社会にならないといけないと切に感じました。人に笑われることも、あるかもしれません。でも、そんなの関係ありません。一人一人が自分の頭で考え、自信をもって発信し、行動に移すことが何よりも重要なのだと思います。その勇気ある一歩が、世界を変えるのかもしれません。
シリコンバレーは、夏は涼しく冬は寒くならないという理想的な気候です。4月から10月までは快晴の日が多く、雨はほとんど降らないそうです。「シリコンバレー最大の魅力は天気」だと、会う人皆示し合わしたように、こう言います。事業のスタートアップというのは、うまくいかないことも多く、気が滅入ることだらけ。そんな時、晴れ晴れとした空気の中にいると、「よっしゃ、やってやろう!」と勇気がわいてくるのだと言います。残念ながら、今回のサンフランシスコ滞在中は、相変わらずの雨男っぷりを発揮してしまいました( ;∀;)。
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