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【不動産王】トランプが大統領になることで発生する事業承継問題

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豆腐屋の二代目である父親が廃業し苦労した経験から、事業を継続することの難しさを実感。苦しさを打ち明けられない社長の心の内に関心を抱くようになる。 会計事務所・東証プライム上場(旧東証一部上場)のM&A専門会社を経て、勇退を志す経営者を応援するサイト「社長勇退ドットコム」管理人を務める。一方で、メルマガ、ブログ、YouTubeなど幅広く情報発信。熱血M&Aアドバイザーが主人公の漫画「ロマンとソロバン」は、集英社の第15回「グランドジャンプ漫画賞」の佳作を受賞している。 ☞ 詳しくはこちらから

大統領選でまさかの勝利を飾ったトランプさん。いよいよ、大統領になりますね。

政治の世界では、先行きが不透明になり、相場の世界では、株や為替が乱高下する事態になっています。かういう筆者も、大統領選の予想が完全に外れ、大変な目にあってしまいました。良くも悪くも、トランプ大統領に多くの人の関心を寄せていることは確かです。

さて今回は、トランプ大統領が抱える事業承継問題ついて、探っていきたいと思います。とその前に、まずは箸休めから・・・。

この記事は、こんな人におすすめです!
  • トランプさんに興味がある人
  • 事業や株式の売却を検討している人
  • 大統領に立候補したい人

バック・トゥ・ザ・フューチャー2が予言した世界

バック・トゥ・ザ・フューチャーは、ご存知ですよね。主人公のマーティーがデロリアンに乗って、現在、過去、未来を行ったり来たりするSF映画です。公開された当時、筆者はまだ小学生でしたが、ドタバタなんじが大好きで、ビデオが擦り切れるほど観たとても思い出深い映画です。

バック・トゥ・ザ・フューチャー (吹替版)バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2 (吹替版)バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3 (吹替版)

このバック・トゥ・ザ・フューチャーの主人公マーティーを虐めていたビフ。このキャラクターのモデルになったのが、ドナルド・トランプさんです。映画脚本家のボブ・ゲイルさん本人も、「トランプをモデルにした」と証言しています。

Amazonプライムで改めてバック・トゥ・ザ・フューチャー2を見返してみると、驚きました。年を重ねたビフは、まさにトランプさんそのもの。ビフ所有のカジノビルも、トランプ・プラザホテルにしか見えません。カジノ経営で富を築いたビフが、世界を牛耳っているというところは、大統領選後のトランプさんと被ります。このバック・トゥ・ザ・フューチャー2の予言に、ネット住民は狂喜乱舞しています。それにしてもボブ・ゲイルさん、おそるべしです。

トランプさんとは関係ありませんが、ボブ・ゲイルさんが的中した予言は、他にもあります。主人公のマーティがスポーツニュースをみて、カブスのワールドシリーズ優勝にビックリするというシーン。こちらも、予言どおりとなっています。昨年カブスは108年ぶりのワールドシリーズ制覇をしています。

バック・トゥ・ザ・フューチャー2の舞台は、2015年10月21日。多少の誤差はあるかもしれませんが、現実の世界との類似点を探しながら鑑賞しなおすのも、面白いかもしれません。

そもそも、不動産王トランプさんってどんな人?

トランプ自伝―不動産王にビジネスを学ぶ (ちくま文庫)

トランプさんは、その富と地位を一代で築いたわけではありません。元々、不動産事業は父親から受け継いでいます。この事業を戦略的なロケーション選定価格設定でブランド価値を高めたのが、トランプさんです。今では、エンパイア・ステートビルをはじめ全米にホテルやカジノ、ゴルフ場などを保有。また、不動産ビジネスを起点に、外食、衣料品、大学経営にまで手を伸ばす、総合的なブランド企業を築いています。

トランプさんの成功哲学

トランプさんは、「物事を大きく考え、あきらめず、敵を作ることを恐れない」という成功哲学を持っています。この成功哲学が、果敢な挑戦者という肯定的なブランドイメージとして捉えられ、有権者の支持を得て大統領となりました。一方で、「良い取引とは、自分が勝つ取引であり、相手が勝つ取引ではない」という考えも持ち合わせているため、拒絶反応を示す人も少なくありません。

トランプ・オーガニゼーション有限責任会社の利益相反問題

 

事業家が大統領になるときに気を付けなければならないのが、利益相反問題です。この問題を簡単に言うと、「大統領は、経営者や株主であってはならない」ということです。

理由はいたってシンプルです。大統領が自分のビジネスに有利になるような政策を行えば、汚職になります。反対に、自分のビジネスに不利になるような判断を続ければ、自分の立場が不安定になるため、大統領としての判断が鈍る恐れがあります。

トランプさんの様々な事業を統括する、トランプ・オーガナイゼーション有限責任会社。この会社の存在が、利益相反に当たるのではないかということで、全米で問題になっています。ちなみに、トランプ・オーガナイゼーションは、非上場のため、資産内容は明らかにされていません。

利益相反取引への対処法

では、トランプさんはこの問題に対して、どのように対処すれば良いのでしょうか。大きく分類すると、4つの選択肢があります。

  1. 全株売却
    トランプさんや家族が保有しているトランプ・オーガニゼーションなどの株式を全て売却して、大統領職在任中は一切経営にタッチしない。

  2. ブラインド・トラスト(白紙委任信託)
    トランプさんや家族の持ち株を信託名義に書き換えて、その信託管理人を「第三者である弁護士など」に委任。信託にしている期間内は、保有財産が生み出す配当等の利益を受け取ることはできない。また企業の経営内容等の情報開示を受けることもできない。

  3. ハーフ・ブラインド・トラスト
    基本はブラインド・トラストだが、トランプさんは別として、家族の経営への関与、家族への経営状態の開示、家族による配当金受取について「部分的に許容する」という考え方。

  4. 家族による事業承継
    トランプさんはビジネスの現場から手を引いて、家族の中から後継者を指名し、ビジネスを任せる。

(情報引用元:ニューズウィーク日本版

大統領としてクリーンなイメージを演出するなら、絶対的に1番が望ましいと思います。ちなみに、1番のケースで株式を売却したときには、非課税恩典があるので、トランプさんにとって損をしない仕組みになっています。ただ、オーナー社長にとって、株主の立場と経営者の立場を同時に失うのは、非常に大きな決断が必要だと思います。父親から譲り受けたものであるなら、なおさら。お金だけの問題ではないのです。

トランプ大統領の事業承継問題

 

1/11の記者会見では、利益相反問題に関して、トランプさんから多くは語られませんでした。大きな非課税恩典があるにも関わらず決断しないのは、何か他に理由があると勘ぐられてもおかしくありません。ワシントンの市民団体CREWの理事ノア・ブックバインダーさんは、このように言っています。

「ドナルド・トランプが大規模な利益相反を回避する唯一の方法は、彼の持つビジネスの全てを家族以外へ売却し、資産を完全に白紙委任とすることである。」

しかしながら、急に会社を売却しろと言われても、トランプさんにも会社にもいろいろと事情があると思います。親から引き継いだ会社には、”おもい”もたくさん詰まっていることでしょう。

そこで、今回はトランプさんが株式売却を拒む理由を、筆者なりに二つほど考えてみました。

1. 株式を売却できる相手がいない

 

トランプ・オーガナイゼーションは、上場していないため、市場で株式を売却することができません。買い手を探すのにはそれなりに時間が必要になります。また、交渉相手が見つかったとしても、条件交渉・買収監査から最終合意まで多くの時間がかかります。ましてや、トランプさんのことですから、譲渡金額は相当強気に出てくると思います。いくら会社に魅力があったとしても、交渉が決裂するリスクもあります。トランプさんとのハードな交渉が予想される中、買収の名乗りをあげることはかなりハードルが高いと思われます。一国の大統領が相手ならばなおさらです。

また、一部の報道によると、客観的な資産評価をすると債務超過、すなわちマイナスになるかもしれないという噂もあります。仮に、債務超過の会社となると、非課税恩典の意味はなくなってしまいます。場合によっては、その事実が明るみになることで、会社経営が立ち行かなくなることもありえます。

どちらにしても、トランプさんにとってメリットのある結果になるとは思えません。

2. 経営権変更に伴い発生する契約違反

 

アメリカの場合、金融機関は、経営者の経営能力を評価して貸し出しを行っています。その点、日本より進んでいますね。ただ、それはトランプさんにとっては、好ましいことではありません。なぜなら、「経営者が変更したら、全額弁済しなければならない」という契約により、行動を制限するようにしている可能性が高いからです。

また、トランプ・オーガナイゼーションは、ドイツ銀行から多額の融資を受けていると言われています。破綻が懸念されているドイツ銀行が経営内容の見直しを行うなか、イレギュラーな動きをすると融資が打ち切りになり、会社を継続させることが困難となるかもしれません。

ファミリー企業の場合、個人の信用が契約の条件になっているケースが多くあります。トランプ・オーガナイゼーションほどの大企業となると、契約形態も複雑化していることが予想されます。トランプさん(顧問弁護士含む)は意外な落とし穴を恐れて、株式売却に着手できないのかもしれません。

信じるか信じないかは、あなた次第です!

筆者のひとりごと

今後、ホテルやゴルフ場事業は2人の息子に任せ、すべての役職から退任すると発表したトランプさん。経営者としての気持ちはわからないでもありませんが、それでは、国民は納得しないような気がします。「その決断は、国民のためか?自分の利益のためか?」世界中がトランプさんの動向に注目しています。一国の大統領として、ご自身が選んだ道に恥じないような決断をしてほしいものです。

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