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誰もが、「金持ちの子どもに生まれていればなぁ」と、単純に金持ちに憧れていた時期はあったと思います。もちろん、筆者もその一人です。でも、金持ちは金持ちなりの苦労を背負って生きているようです。
さて今回は、日本が誇る世界の大企業トヨタの豊田章男社長の苦悩について、探ってみたいと思います。
4月にアメリカのクライスラー社が、6月にはゼネラル・モーターズ社が連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した2009年。世界の自動車産業は激動の年でした。
その年、赤字にあえいでいたトヨタは、6月23日の定時株主総会後の取締役会で、豊田章男副社長(57歳)が社長に就任し、新経営体制が発足しました。各種マスコミで「大政奉還」と大報道されたため、覚えている方も多いのではないでしょうか。
満を持しての大政奉還。しかし、豊田章男社長を待ち受けていたのは、“試練”と呼ぶにはあまりに過酷なものでした。
豊田章男社長が就任早々、リコール問題が勃発。トヨタの名声は地に落ちます。YouTubeの動画を見てもわかるように、アメリカの公聴会では、ものすごい質問攻め。まるで、針のむしろです。
聞くに耐えないこの壮絶なやりとりの中に、創業家の誇りを感じさせる豊田章男社長の言葉がありました。
「私は創業者の孫であり、全てのトヨタ車に私の名前がついています。私にとって車が傷つくことは、私自身が傷つくことです。」
この気持ち、創業者一族にしかわからないものだと思います。
また、2013年末、豊田社長は母校の慶應大学での講演で、このような言葉を発しています。
「何しろこんな名字だから」
父親であり社長でもある豊田章一郎さんからは、常にプレッシャーをかけられ、友人や同僚からは、将来の社長候補ということで、いつも特別視されていました。豊田章男社長は、長らくこの微妙な距離感がコンプレックスだったそうです。
「こんな」と表現しているあたり、あまり良い思いをしてこなかったのだと推測できます。常に、豊田家を意識させられ、自分を個人として扱ってもらえない生活は、時には人間不信に陥ることもあったかもしれません。なんとも複雑なおもいの中で、生きてきたことだけはわかります。
44歳の若さでトヨタの取締役に就任したとき、章男さんに一つの転機が訪れます。それはトヨタのテストドライバーを率いる成瀬弘さんとの出会いです。
「こっちは命がけなんだ。運転のことをわからない人に車のことをああだ、こうだ言われたくはない」
章男さんへの厳しい叱責を繰り返します。テストドライバーとは、開発車両の性能評価などを通してエンジニアとともにクルマ造りを担う職人です。取締役だろうが、御曹司だろうが全く関係ありません。
普通だったら激怒してもおかしくない状況ですが、章男さんは違いました。逆に、正直に意見してくれる成瀬さんに信頼をよせるようになったのです。
それ以来、趣味のゴルフを控え、成瀬さんの下で運転の基礎技術を学ぶことになりました。
その答えが「安全」でありまた「楽しい」ということを、現場で直に学んでいったのです。
その後、2007年からはドイツで開催される24時間耐久レースにも参加し、その活動は今でも続いています。その原点は、もっとクルマ好きを増やしたい、もっと走る楽しさを伝えたいという、成瀬さんから受け継いだおもいでした。
会社が巨大化して利益を追い続けるうちに、誰もいいクルマとは何かということを考えなくなっていました。いわゆる、利益優先主義です。しかし、章男さんは違っていたそうです。現場では、エンジニアやテストドライバーと“感覚”で話をするようになっていたのです。
「クルマの乗り心地は数値では表わせない。乗っている人しかわからない感覚なんです」
”クルマの原点”を教えた成瀬さんは、章男さんが社長に就任した翌年の2010年、ドイツで開発車を運転中に帰らぬ人となります。享年67歳でした。豊田章男社長が、今でもハンドルを握るのは、亡き恩師への「弔い」かもしれません。
豊田章男社長が、アメリカで非難の矢面に立ったことで、社員の意識は明らかに変わりました。社長が最前線で戦う姿を見て、「自社のトップとして親近感を持てるようになった」という声も上がっています。
アメリカでの壮絶なリコール問題について、後に豊田章男社長はこのように語っています。
「この時初めてトヨタのお役に立てると思って、うれしい気持ちもあった」
改めて、創業家の強さを垣間見ました。とんでもない覚悟です。創業家は良くも悪くも、常に色眼鏡で見られてしまう宿命にあります。しかし、そのコンプレックスやプレッシャーを見事に跳ね除けた豊田章男社長、ほんと男前です。
その後も、トヨタには数々の試練が訪れます。
これらの試練も見事に跳ね除け、トヨタは再び販売台数世界一の座に返り咲きます。2015年3月期決算では過去最高益の更新も囁かれています。今後も豊田章男社長の”ハンドルさばき”に注目です。
どのような家庭に生まれても、悪いことの一つや二つあると思います。時には、隣の芝生は青く見える時があるかもしれません。でも、現状を嘆いても何も始まりません。できるのは、今しかない今を精一杯生きることだけです。
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