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【税金天国】ドバイのモハメッド首相が目指した世界ナンバーワン戦略

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豆腐屋の二代目である父親が廃業し苦労した経験から、事業を継続することの難しさを実感。苦しさを打ち明けられない社長の心の内に関心を抱くようになる。 会計事務所・東証プライム上場(旧東証一部上場)のM&A専門会社を経て、勇退を志す経営者を応援するサイト「社長勇退ドットコム」管理人を務める。一方で、メルマガ、ブログ、YouTubeなど幅広く情報発信。熱血M&Aアドバイザーが主人公の漫画「ロマンとソロバン」は、集英社の第15回「グランドジャンプ漫画賞」の佳作を受賞している。 ☞ 詳しくはこちらから

中東=オイルマネーという印象が強くありますが、ドバイは元々そんなに石油が取れない場所です。

ドバイが属するアラブ首長国連邦(UAE)は、7つの首長国から成り立つ連邦国家です。このうち、石油を大量に産出するのは、首都が置かれているアブダビ首長国のみ。ドバイはそのおこぼれを頂戴しているにすぎません。

ドバイがお金に困っていたことを示すエピソードとして、かつて建設段階に「バージュ・ドバイ」と呼ばれていたバージュ・カリファの建設が有名です。2009年ドバイ・ショックで、建設資金が枯渇したドバイは、アブダビから経済的な援助を受ける事態に陥りました。これにより、当時UAEの大統領だったカリファ・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン氏の名前を取って、「カリファ」という名前に変更されました。

アブダビの経済依存から脱却ドバイの発展の原点であり、独り立ちドバイの目標でした。

☝ナンバーワン戦略を推し進めたドバイ

ドバイは国土のほとんどが砂漠の資源に乏しい国です。一昔前までは、漁業と真珠の輸出が主要な産業の小さな中間貿易港にすぎませんでした。

ドバイが大きく舵を切ったのは、モハメッド首長の勇気ある決断からでした。

💰1985年のドバイ

ドバイを本拠地とするエミレーツ航空を設立。当初はたったの2機での開業でしたが、次々と新機材の導入や世界各地へと就航を拡大させ話題を呼びました。世界とドバイを結ぶハブ空港は、「ヒト」と「モノ」が集まる中継地点として、重要な役割を担うようになりました。

💰1990年代のドバイ

当時の皇太子であったモハメッド首長により、「世界一」を目指す都市開発プロジェクトが推し進められました。連日ドバイの港は世界中から物資を積んだコンテナ船でごったがえし、「世界の3分の1のクレーンがドバイに集結している」と、言われるほどの急ピッチで開発が進んでいきました。

💰1999年のドバイ

・7つ星ホテルバージュ・アル・アラブがオープン。

💰2001年のドバイ

・世界最大の人工島となるパーム・アイランドの一部であるパーム・ジュメイラの建築を開始。

💰2009年のドバイ

・世界最長の無人鉄道となるドバイ・メトロが運行開始。

💰2010年のドバイ

・世界一の超高層ビルバージュ・カリファがオープン。

 

ドバイの素晴らしい建造物などは、こちらをご覧くださいませ。

 

ここでポイントは、「世界一」ということです。例えば、オリンピックなどのスポーツの世界でも、1位をとらなければ目立ちません。残念ながら、2位以下だと名前すら覚えてもらえないのが、悲しき現実です。蓮舫さんではありませんが、2位じゃダメなんです ダ━━(乂Д≦`o)))━━メヨ!!

ドバイには、ヨーロッパやアジアのような歴史的・文化的な建造物はありません。ハワイやバリのように豊かな自然だったり、過ごしやすい気候でもありません。(砂漠地帯なので、夏は50度を超え、夜は寒い。)人を集めるためには、無理矢理にでも特徴を作り出す必要があったのです。

世界一高いタワー、世界一高いホテル、世界一大きい人工島、世界一大きいモールなど、「とにかく世界一のものを作っちまえ」という精神で、次々と資金を集中投下。壮大で夢のようなプロジェクトに魅了された投資家によって、資金は世界中から続々と集まりました。また、並行して規制緩和を行い、不動産市場や株式市場の門戸を開放することで、海外マネーをドバイへと流す仕組みを構築していったのです。

🐪 地理的・地政学的に優れていたドバイ

エミレーツ航空の存在なくして、ドバイは語れません。中世の時代に「海のシルクロード」と呼ばれていたアラブ商人の交易の中継地点を、ハブ空港を建設することで復活させたのです。ドバイの対岸にはペルシャがあり、南ロシア、インド、パキスタン、アラビア半島、東アフリカなど、飛行機で2時間圏内に約20憶人の人口がいます。ドバイを最終目的地としてではなく、トランジットの地として位置づけたことで、多くの人に利用される空港となりました。結果として、エミレーツ航空は、世界150以上の都市に運航し、ドバイ国際空港は年間約7,800万人の外国人が利用する世界第一位の空港となったのです。

ファーストステージで企業、セカンドステージで観光客の誘致に成功したドバイは、その仕上げのサードステージで、世界中の投資資金を集めることにも成功しました。それもこれも、モハメッド首長が、脱石油化代替産業の育成という大きなビジョンを示したからです。

ドバイは、石油に依存しない国づくりを目指すことで、何もないところから「観光都市ドバイ」を作り上げました。経営資源の少ない中堅・中小企業にとっては、”選択と集中”のお手本となるとても面白い事例だと思います (゚□゚o)ノノ スッ.スゴスギ…。

👼ドバイは世界有数のタックス・ヘイブン!!

人を集める仕組みはこれだけではありません。ドバイは、税金の面でも策を弄します。それが、タックス・ヘイブン(税金天国)です。タックス・ヘイブンとは、法人税や所得税などの課税が、著しく低い国や地域のことを指します。ドバイでは、外国企業を誘致するために、製造業や物流だけでなく、一部の事業(外国の銀行、石油・ガス・石油化学会社)を除いた、全ての事業が非課税としました。

非課税ですよ、非課税っ。ドバイでは、企業が商品を輸入する際に一律5%の関税がかけられる以外は、法人税、所得税、不動産税、キャピタルゲイン課税、自動車税、相続税、タバコ税などの税金は一切ありません。個人の所得は、給与明細の額がそのまま手取りの額となります。これは、すごいことですよね…(゚Д゚ノ)ノスゴィッッッ!!!!!!!!!!!

⚖ タックス・ヘイブンが企業にもたらす効果

通常、香港やシンガポールなどのタックス・ヘイブンでも、数%~20%の課税がありますが、ドバイではなんと法人税が0%。タックスヘイブンを通り越して、タックス・フリーです。この非課税という圧倒的な収益性の向上と、様々な優遇措置に着目したのが、金融業界です。

「非課税」の効果は、絶大です。ドバイの法人税を0%、日本の法人税を30%として比較すると、一目瞭然です。同じ利益でも、ドバイでは100%を受け取れるのに対し、日本では70%しか受け取ることができません。つまり、ドバイに拠点を移すだけで、企業は収益性を1.4340%以上も向上させることができるのです。

リターンが1.4倍も違うというのは、長い目で見ると非常に大きな差につながります。ドバイで年20%×10年間運用すると約6.2倍になるのに対し、日本で14%(20%×0.7)×10年間運用しても約3.7倍と、約1.7倍の差がついてしまいます。世界中の証券会社やヘッジファンドは、こぞってドバイに拠点を移すのも頷けますね。

今後、日本においても、タックス・ヘイブン税制はドンドンと厳しくなっていくことが予想されます。もし、あなたが節税目的でタックス・ヘイブンを利用するのであれば、これらの規制をしっかりと理解してから行うようにしましょう。もし、タックス・ヘイブンにご興味ある方がいましたら、お気軽にご連絡くださいませ。

🇦🇪 ドバイは、なぜ税収がないのに国家として成り立っているのか?

石油も出なくて、税金もなかったら、ドバイがどのように成り立っているのか、疑問に思う方もいるかもしれません。筆者もそうでした。ドバイでは、税金の代わりに手数料という名目で政府がお金を徴収しています。つまり、タックス(税金)という呼称を用いず、フィー(手数料)という呼び名で直接または間接的に徴収している収入があるのです。

ドバイにおける企業の寿命は1年間限定で、ビジネスを継続するには毎年登録を更新する必要があります。この時に支払うのが、「更新料」という名目の手数料(約100万円)であり、法人から徴収する政府の収入となります。個人からは、ホテル内のレストランでの飲食や宿泊料金に、10%の地方自治手数料を課しています。

それでも、企業や個人にとって直接的で影響力が強い法人税、所得税などの税金が一切ないので、会社を経営する人や現地で生活する人にとっては、夢のような経営環境、生活環境であることは間違いありません。

①中東のハブという立地、②インフラの整備、③タックス・フリーという環境。三拍子を備えたドバイに、企業や人が押し寄せていったのは、今考えると必然としか思えませんね。

🏢ドバイは、税務申告の必要がない!

ドバイには、「中堅・中小企業向けの会計事務所」がありません。税金がないので、税金を計算する必要がないからです(大企業を除く)。筆者が接見したバージュ・カリファで暮らすヘッジファンドの代表(東大卒31歳)は、このように語っていました。

税金計算ほど、不毛な作業はない!

確かに、そのとおりかもしれません。

今回のドバイ出張は、我々が提供する価値というものについて、大いに考えさせられる良い機会となりました。今までの固定された観念から発想を大きく転換させなきゃいけない時代が、すぐそこまで迫っている、そんな気持ちにさせられました。

💬 筆者のひとりごと

もし、「ド派手な世界一のオンパレードに疲れてしまった」という方には、砂漠サファリ・ディナー・ツアーがおススメです。四輪駆動車で砂丘ドライブの後、ラクダに乗ったり鷹狩りの見学をしつつ、バーベキューを食べベリーダンスを堪能できるツアーです。

人工的な都市から少し離れて、雄大な自然(砂漠)が拡がる昔のドバイを体感してみるのも良いでしょう。真っ暗な砂漠から見上げる星空は、都会では味わえない至極のひとときとなること間違いなしです。

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