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スターバックスの原点~ハワード・シュルツが提唱した第三の場所~

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磯村 崇

昭和51年 愛知県常滑市生まれ
大学卒業後、会計事務所・M&A専門会社(現在、東証1部上場)を経て、平成20年株式会社コスモスコンサルティングに入社。

「答えは、社長の心の中にある」がモットーで、社長の話に真摯に耳を傾け、企業の発展と存続のため、社長と後継者の真の気持ちに重きを置いた事業承継対策・勇退のサポートに取り組んでいる。

スターバックスのハワード・シュルツさんが、4月にCEOを退任すると発表しました。後任には同社の社長兼COO(最高執行責任者)、ケビン・ジョンソンさんが就任するそうです。

過去に一度、シュルツさんがCEOから一線を退いたとき、業績が低迷したこともあったスターバックス。今後、ジョンソンさんがどのように経営を切り盛りするか気になるところです。

さて今回は、スターバックスの原点、シュルツさんが提唱した”サードプレイス”というコンセプトについて探っていきたいと思います。

この記事は、こんな人におすすめです!
  • スタバを愛してやまない人
  • 自分の居場所を探している人
  • 引退後も後継者の動向が気になる人

スターバックスを買収した元従業員ハワード・シュルツ

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シュルツさんは、NYブルックリンの貧困街に生まれました。貧しい家庭ではありましたが、自ら学費を稼ぎながら、なんとか大学を卒業。大学卒業後、調理器具の販売会社を経て、コーヒー豆の販売店スターバックスに転職します。この時、スターバックスはまだまだ小さな会社でした。

転機になったのは、1985年。仕事でイタリアを訪れたシュルツさんは、生活の一部となっているエスプレッソ・バーに感銘を受けます。会社に進言するものの、却下されてしまったため、退職して自らエスプレッソ・バーを開業したのです。結果は、見事に大成功。開業からたった二年で、スターバックスを380万ドルで買収したのです。

シュルツさんが、エスプレッソ・バーを開業するにあたって、お店のコンセプトとしたのが、サードプレイスという考え方です。

サードプレイスとは

サードプレイス―― コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」

今流行りのノマドワーカーではありませんが、筆者もiPadを持ち歩き、仕事の合間に喫茶店で仕事をしたりしています。メール送受信やブログの執筆など、外の方がかえって落ち着いてできるような気がします。

サードプレイスとは、自宅(ファーストプレイス)でも、職場(セカンドプレイス)でもない、自分らしさを取り戻せる第三の居場所のことです。この概念は、アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグさんが提唱した考え方で、言葉としては30年前から存在していたようです。筆者は、てっきりシュルツさんが提唱したもんだと思っていましたが、筆者の勘違いでした。

サードプレイスという考え方が生まれた背景には、何があったのでしょうか。

サードプレイスが注目された背景

多くのビジネスマンは、大きなストレスを抱え、自殺や過労死によって、尊い命が失われています。行き過ぎた成果主義により、家庭的な企業が減り、自分が所属するコミュニティから孤立する人の増加が原因とされています。都市で暮らす人こそ、ストレス傾向が顕著に表れているようです。

サードプレイスの三大特徴

1. 中立・平等

サードプレイスは、政治・経済・法律などによって縛られることなく、自由に過ごすことができる場所です。また、参加する機会は平等で、条件は一切存在しません。自らの意思で気軽に参加できるからこそ、高揚感が得られ、価値ある時間と感じることができるのです。

2. リラックスした雰囲気

サードプレイスは、健全な存在で、家庭的なぬくもりがあります。包容力をもってすべてを包み込み、否定的な発言(緊張・憎悪などを感じさせるもの)は歓迎されません。リラックスした雰囲気なので、自然と笑顔があふれるのです。

3. 常連さんや会員の存在

サードプレイスには、必ず常連さんの存在があります。常連さんたちによってその空間の色が作られていきます。なので、とても個性的になります。個性的でありながらも優しさがあるため、多くの人がその居心地を求めて、その空間に魅力を感じて集まってくるのです。

サードプレイスの三大効能

1. 主体性・自立性の向上

サードプレイスへの参加は、自分の意思で行うため、主体性や自立性を大いに発揮することができます。決断力は自然と高まっていきます。

2. 創造性の発揮

自宅や職場でもない気の合う人との交流は、たくさんの発見と刺激をもたらせてくれます。

3. メンタルリセット

人は誰しも社会的な役割を演じており、複雑な人間関係に悩みを抱えています。サードプレイスでは肩書は一切関係ないため、自分という存在を再認識でき、精神的な調和を図ることができます。

現代社会では、常に誰かとコミュニケーションを取っています。複雑な人間関係に疲れてしまう人も、少なくありません。自分が社会に対して何らかの役割を果たしているという実感を得たいのが人間というものです。あなたにとって、利害関係で結ばれていない、安心できる第三の場所はありますか。

スターバックスが取り入れたビジネスコンセプト

スターバックスは、単にコーヒーを飲む場所を提供するのではなく、サードプレイスになることをビジネスコンセプトとしています。つまり”空間”を販売しているのです。

「本当に作りたかったのは、居心地の良い場所です。深煎りコーヒーだけではありません」

シュルツさんは、クオリティの高いコーヒーの提供だけではなく、人と人のつながりを大切にできる空間を提供することを目標に掲げました。

一般的に、サードプレイスとして利用される店舗は、顧客の滞在時間が長くなります。そのことで客単価は上がるかもしれませんが、回転率は確実に落ちます。経営者としては、とても悩ましい問題です。回転率を良くするため、店内のコンセントを使用不可にしたり、長時間滞在を禁止にするカフェもありました。利益重視の考え方から、慣れ親しんだ常連さんを追い出してしまったのです。

そんな中、スターバックスは多くのカフェを横目に、真逆の方針、すなわち回転率の悪い顧客を積極的に受け入れたのです。当時、この考え方は異端であり、画期的でした。

  • 滞在時間に制限は設けない
  • 全てのお客さまに満足してもらう環境作りを行う
  • サードプレイスとして選択してもらえるよう、努力しつづける

シュルツさんは、3つの原則を作り、それを愚直に守り、お客さまとの良好な関係を築いたのでした。今現在のスターバックスがあるのは、「サードプレイスをどうしても提供したい!」というシュルツさんの強いおもいと、従業員の不断の努力の賜物です。

ハワード・シュルツによる原点回帰のスターバックス再生

スターバックス再生物語 つながりを育む経営

シュルツさんは、過去に一度スターバックスを退任しています。引退した2000年から、スターバックスの業績が落ち込みはじめました。無茶な出店計画などが原因で、人材不足やクオリティが低下し、業績が悪化。2008年には、ついに赤字に転落、スターバックスというブランドに陰りが見え始めたのです。

既存店の売上が鈍り、その場しのぎの戦略としてとった策が次々に裏目に出て利益が落ち込み、手っ取り早く利益を確保するために、必要なIT投資を怠っていたのです。完全なる悪循環です。シュルツさんは、スターバックスが不振に陥った要因を見抜いていました。成長する事を目的にしてしまっていたのです。

CEOとして舞い戻ったシュルツさんは、まず7,100もある店舗を一斉に閉店。バリスタの再教育とブランド力の向上を図ったのです。その結果、数百万ドルの損失が発生。関係者からは非難轟々です。しかし、シュルツさんは、そんなことにはめげません。原点回帰を目指し、次々と手を打っていきました。

第4の場所 Starbucks Digital Network

従業員の教育にも目途が立ち始めた2010年には、WiFiを無料開放し、音楽や映画などを無料で提供するSDN(Starbucks Digital Network)を開始しました。サードプレイスをさらに推し進めた、第4の場所”フォースプレイス”構想です。SDNによって、スターバックスは、単なるコーヒーを飲む場所ではなく、それぞれ個人にとって趣味を楽しむ”価値ある空間”になったのです。

また、TwitterやFacebookなどSNSの発展により、「スターバックスの経験」を店の外に拡張できるようになりました。宣伝広告に頼らず、いわゆる”意識高い系の人”たちが勝手にスタバの魅力を発信していく状態を作り上げたのです。この当時、シュルツさんは大胆な発想でピンチを乗り越えていったのです。この効果たるや、計り知れません。スターバックスが、40年間で築いた信頼関係が最高のカタチで実を結んだ瞬間でした。

その結果、赤字転落からわずか3年後の2011年9月期、スターバックスの売上高は120億ドルと過去最高を記録したのです。

筆者のひとりごと

シュルツさんが、経営危機に陥ったスターバックスを再生することができたのは、会社(セカンドプレイス)にいながらも、「社会の役に立っている」という実感や、「ここにいていいんだ」という安心感、言い換えれば、サードプレイスの感覚を従業員に与えることができたからこそ、成しえた偉業だと思います。これこそが、現代の経営者に求められている役割だと筆者は思います。

会社を引き継ぐケビン・ジョンソンさんには、スタバの原点を忘れず、シュルツさんが再登板することがないようにして頂きたいものです。

次は、事業をうまく引き継ぐことができなかったお話「円谷プロのお家騒動~ウルトラマンを承継できなかったずさんな同族経営~」をご覧下さいませ(๑˃̵ᴗ˂̵)و テヘペロ

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